最新のお知らせ

2024年5月26日(日)に2024年度の総会と記念講演会および研究発表会を美博講堂で行います。

2018年12月30日日曜日

12月例会を開催しました

2018年12月22日、第3回となる通常例会を柳田國男館会議室で開催しました。

発表1 片桐みどり会員「天神様のお祭り」

 片桐みどり会員は、飯田下伊那の天神様の祭り(天神講)について、自身の体験や調査結果、先行文献などから約10件の事例を報告しました。
 天神様の祭りは子ども(主に小学生)の行事で、2月25日を祭日とするところが大半です。片桐会員は飯田市松尾、鼎、上郷、下久堅三石平、豊丘村柿垣外、阿智村下清内路などでの事例を報告しました。
 天神様の祭りでは、太鼓を叩き天神様の歌を歌いながら町内を練り歩いたり(松尾)、菅原道真の旗を持って祠に参拝したり(上郷)、集会所に集まって「塩気のご飯」を食べたり(各地)しました。
 松尾では大正時代に天神祭りの際に小屋を作って泊まり込んだほか、柿垣外では子どもたちが大人たちのまねをして宴会で盛り上がりました。一方で知久平では上級生の指導の下で勉強会を開くなど、地域や時代によって行事内容に違いがあることが報告されました。
 出席者からは、飯田市毛賀、同市上村中郷、高森町吉田の天神祭りについても情報が寄せられました。
 一部の民俗事典では天神講について、大人たちの氏神祭祀が変化したものとする説明もありますが、片桐会員の発表を聞いた参加者からは、寺子屋の影響が大きいのではないかとの感想が相次ぎました。

発表2 櫻井弘人会員「風越山の信仰とオクンチ」 

櫻井会員は、風越山に鎮座する白山社で旧暦9月の9・19・29日に行われた「九日祭(通称オクンチ)」が、1947年の飯田大火までは大勢の参詣客で賑わっていたことを取り上げました。
 風越山のオクンチでは、近郷の人々が日の出前から山頂に登拝する「朝路参り」をし、下山後は山麓で酒や五平餅を楽しんだり、銀杏を土産に購入したりする飯田独特の伝統でした。しかし白山社が出征兵士を守る神として信仰されていた反動で、戦後になると急速に廃れることになりました。
 櫻井会員は、白山社の祭神である菊理媛は死者と生者の間を取り持つ巫女神ではないかとする説があること、愛知県東栄町古戸では、花祭りに先立って地元の白山山頂(650m)で「白山祭り」が行われること、この祭りは花祭りの原型ともいわれ、死と再生を象徴的に表現する大神楽(白山行事)と関わりが深いことなどを示し、風越山のオクンチも山頂で新たな太陽を迎え「蘇り」や不老長寿を願う行事だったのではないか、と推論しました。
 また、菱田春草(飯田出身)の名画「菊慈童」や地酒「喜久水」も、その誕生の背景には風越山のオクンチのイメージが影響していた可能性もあるのではないかと述べました。