最新のお知らせ

2024年5月26日(日)に2024年度の総会と記念講演会および研究発表会を美博講堂で行います。

2018年11月28日水曜日

11月例会を開催しました

2018年11月24日に柳田館で第2回の通常例会を開催しました。
京都から来飯したという一般の方も含めて8名が参加し、有意義な会となりました。

発表1 寺田一雄会員「民俗の聞き書きについて」

当研究所の前事務局長で民俗調査部会の部会長も長く務めた寺田会員は、民俗調査の基本である「聞き取り」をテーマに発表。『日本の民俗学11』「民俗学案内」(2004年)をテキストに、野本寛一元所長のフィールドワークの方法を紹介しました。野本先生の個人調査は予約なしの飛び込みながら、農繁期を避け手土産を忘れないなどの配慮があり、話者の話を遮らずに耳を傾け、思いがけない発見の機会を重視しています。
 寺田会員は自ら行ってきた聞き取りの方法について、「どうしても一方的な質問になってしまいがちで、野本先生のように同じ話者の元へ何度も足を運ぶこともできなかったのが反省点」と振り返るとともに、「今後は個人的な調査を続けながら、これまでにやってきたことの成果を何らかの形に残したい」と抱負を述べました。
 野本先生の調査に身近に触れた参加者からは、「先生は相手の玄関を叩く前に庭先にあるものなどをしっかり観察し、その話題を切り口に相手の懐に飛び込んでいく」「話題が横道にそれてもしばらくずっと聞き続け、タイミングを見計らってぐいっと引き戻すテクニックがすごい」といった発言がありました。



発表2 北原いずみ会員「遠山谷におけるどんどやき」

研究所の民俗調査で年中行事を担当してきた北原会員は、飯田市遠山地方のどんど焼きを分析。これまでに同地域で確認されたどんど焼きは15カ所に上り、飯田近辺と比べると御幣を飾らず20メートルもの竹を高く立てるのが特徴であると指摘しました。
 遠山谷での呼称は「どんど焼き」が主流ですが、北澤悦佐雄氏の報告(『民俗学』1933年)によると下栗や程野ではサギチョウとも呼ばれていたとのこと。
 どんど焼きは昭和や平成に入ってから始めたという地区も多く、遠山にこの行事が普及したのは比較的最近のことではないかと想像される、と指摘しました。
 どんど焼きをしない地区は、正月飾りを「山に返す」といって立木の根元などに納めています。また此田にはコト八日の歌によく似た「いちのぽっぽにさんやりよ」、上町には飯田とよく似た「ほんやりほうほ」の歌が報告されており、後者は小川路峠を越えて伝わった可能性があるとしました。
 参加者からは、「遠山でどんど焼きが行われるようになったのはPTAの役割が大きいのではないか」「遠山の正月行事は、生活改善運動によって大正月と小正月を同時にやるようになった点が特徴」といった意見がありました。

次回の通常例会は12月22日(土)となります。民俗や民俗学に興味のある方なら非会員でも気軽に参加できます。
(文責 今井)