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2021年12月19日日曜日

【報告】11月例会 福田菫会員発表要旨(2021.11.27)

「長野県においける盆の儀礼食―オヤキ・饅頭・天ぷら饅頭」

 『長野県史』と県内市町村誌から麺類を除く粉餉(こなけ)の事例を抽出し分析したところ、オヤキは北信、饅頭は東信、団子と餅は中南信に集中していることが分かった。

 上伊那での聞き取りによれば、天ぷら饅頭は彼岸・盆・葬式などに食べ、油も饅頭も貴重なのでご馳走として扱われる。饅頭は日が経つと固くなるので、油で揚げて柔らかくした。天ぷら用饅頭を製造販売している伊那市の和菓子メーカーによれば、販路は中南信が主だが、その出身者が食文化の伝播者になって県下全域に広がっている。

 江戸・明治期の記録でも、油あげ(揚げ物)が盆のご馳走ではつきものになっており、この観念が後の天ぷら饅頭を成立させたと思われる。

天ぷら饅頭は長野県の他に岐阜県飛騨地方や福島県会津地方などで作られるが、会津への分布はのちに会津藩に移った高遠藩主保科正之の影響であるとの伝承もある。(文責:今井啓)