「長野県における厄落とし習俗」
長野県内の「厄落とし」事例を収集し、主に行われる3つの習俗(神仏参詣、振る舞い、厄放棄)について分布図を作成し分析した。
神仏参詣では、参拝先として東・北信地域が北向観音(上田市)、中・南信地域牛伏寺(松本市)が多い。宴や芸能を近親者に振る舞う儀礼は県北部と南信に分布し、とくに上伊那で盛んだった。
小銭や大根などを投げ捨てる厄放棄は正月や小正月に行われ、長野県南部では茶碗を捨てるのが特徴的である。それを行う場所は、中東信および下伊那は辻、長野市・諏訪・上伊那などは道祖神または小正月の火祭りとなっている。
長野県の厄落とし習俗は、異なる方法を組み合わせて行っており、確実に厄を払おうとする意識がうかがえる。(文責:今井啓)