小川直之所長による講座「折口信夫を読み解く」の第1回が2018年8月18日に柳田館で開かれ、27人が聴講しました。
今回使用したテキストは講演筆記のため読みやすい「祭りの話」(1947年)です。折口はこの中で「まつる」という語は古くは供え物をする意味だったとし、供え方には高く盛る「立てまつる」、台に並べる「置きまつる」、そして有象無象の精霊などのために地面に置くという3つがあったと述べています。
そして神に供物を捧げ服従を誓うのが「まつらふ」であり、諸国の初穂(税)を滞りなく収めさせることが「まつりごと」であったと説明しています。
小川所長は、「まつる」のさらに古い意味は神が人へ宣命を行うことであると折口が考えていたこと、上納と下賜の関係は現在の盆暮れの贈答にもつながり、霊魂の力を身につける「たまふり」とも関わってくることを解説。
祭りは神との共食に意義があるため、現在の神社で主流の生饌(生の供物)よりも、家庭で行われている熟饌(調理した供物)の方が古いあり方だろうと指摘しました。
また、「折口の論文は具体的事例をほとんど示さず、非常に抽象性が高いため読者に高い教養を要求する。かたや柳田は見たもの聞いたものを次々と並べる紀行文の名手。これが両者の大きな違い」とし、折口を読むことが柳田をさらに理解することにつながると強調しました。(文責 今井啓)